もくじ
1.コエンザイムQ10とは、何ですか?
コエンザイムQ10とは、私たちが生きていくエネルギーを生み出すために欠かせない補酵素のひとつ。肉類や魚介類、野菜にも自然に含まれている成分です。もちろん、私たち人間の体内でも作られています。別名を「ユビキノン」と言うのは、「生物界に広く分布するキノン類」という意味だそうです。コエンザイムQ10名前のヒミツ
「コエンザイム(coenzyme)」というのは、補酵素のこと。酵素が本来の力を発揮するときに欠かせない存在です。ビタミンB群(チアミン、リボフラビン、ピリドキシン)や、ナイアシンなどが、補酵素として有名です。 コエンザイムQ10は、これらのビタミン類と同じ働きをするということから、「ビタミンQ」なんて呼ばれていた時代もありました。
でも、本当のところ、私たちの体内で作り出すことができるものはビタミンとは呼べないんです。なので、今は「ビタミン様物質」と分類されています。
簡単に言うと、ビタミンに似た働きをする物質、ということですね。 化学構造を見ると分かるのですが、側鎖「イソプレン(C5H8)」を10単位持っているので、「コエンザイムQ10」と名付けられました。
健康を維持するのに大きな役割
最初に発見したのは1957年、ウィスコンシン大学の付属酵素研究所でした。ミトコンドリアの内膜や原核生物といった細胞膜に存在し、電子伝達系を構成する成分のひとつであることが分かったのです。
私たちの体のすべての細胞ひとつひとつに、コエンザイムQ10が存在しているんですね。それは、体にとってなくてはならない成分だということを証明しています。体を動かす原動力になっているし、体の健康を維持していくために大きな役割を果たしていると考えられています。
ただし、年齢を重ねるとともに、体内のコエンザイムQ10の量が徐々に減っていくということも分かっています。 体内のコエンザイムQ10の量を年齢別に計測した資料を見ると・・・
20歳のときの量を100%とすると、80歳のときには、肺は65%に、心臓は43%にまで減ってしまうそうです。
2.コエンザイムQ10にはどんな働きがあるんですか?
コエンザイムQ10は、生物が生きていくためのエネルギーを作ることと、活性酸素を除去することという大切な働きをしています。生きていくエネルギーを作る
コエンザイムQ10はミトコンドリアの電子伝達系で電子の受け渡しに関わる「補酵素」として働いています。ATP(アデノシン三リン酸)を生み出すのに欠かせない存在で、ATP合成の効率を上げてくれるんですね。これを「ミトコンドリア賦活効果」などとも呼んでいます。ATPというのは、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、体全体を動かすためのすべての原動力になっている大切な物質。私たちが生きていくために必要なエネルギーはすべてATPによって生み出されているといっても良いでしょう。 そのATPを作り出すのにとても重要な役割を果たしているのが、コエンザイムQ10なんです。
活性酸素を除去する
コエンザイムQ10のもう一つの特長は、強い抗酸化作用があること。抗酸化物質として、ビタミンEと一緒になって働くと考えられています。ちょっとムズかしい話ですが、詳しく説明すると・・・ 私たちの体が運動や疲労といったような酸化ストレスにさらされると、体内に活性酸素が発生します。これを還元型CoQ10(コエンザイムQ10:ユビキノール)が還元してビタミンEに再生します。自身は酸化型CoQ10となり、血流に乗って肝臓で吸収されます。その後、再び還元型CoQ10となって体内を巡るのです。
活性酸素が除去されると、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞といった成人病の予防だけでなく、慢性疲労の改善や、体全体の老化防止に役立つことが分かっています。
うっ血性心不全の治療薬に
実は、コエンザイムQ10は医療用医薬品として使われていた時代がありました。1973年に、日本で、うっ血性心不全治療のために医療用医薬品として認可されたのです。これをきっかけに、様々な臨床研究が行われるようになりました。コエンザイムQ10にはどのような効能があるのか、医療機関だけでなく、健康食品業界もこぞって研究を重ね、サプリメントとして商品化されることにつながっていったのです。3.コエンザイムQ10サプリメントの実際の効能が知りたいです
現在、コエンザイムQ10は医薬品ではなく食品のカテゴリーに入っているので、サプリメントの『効能』というものははっきりと言えない(分からない)、というのが正解です。ただし、様々な研究機関がコエンザイムQ10サプリメントとプラセボ(偽薬)を使った比較試験を実際に行っていて、その結果が公表されていますので、その中から私が気になったものをいくつか紹介したいと思います。
疲労感の改善
慢性疲労症候群と診断された方を対象に、還元型コエンザイムQ10を3か月間摂取してもらった結果、疲労・睡眠・うつ状態といった自覚的な症状が改善し、自律神経機能の改善効果が見られたという報告があります。また、他の試験でも、身体的疲労の度合いを測るために唾液SlgA分泌速度の変化を調べたところ、コエンザイムQ10を2ヵ月間摂取した後とする前とでは、2倍以上の変化が見られたという報告がありました。
QOLの向上
コエンザイムQ10を1年間継続摂取した結果、社会生活機能、日常役割機能、心の健康、活力など、主に精神系のQOLスコアに改善が見られたという報告があります。QOLとは「Quality of Life」のこと。高齢化が進む時代に、毎日の生活の質が向上するというのは、すごく大きなメリットだと思います。歯周病の改善
唾液中の酸化ストレスが上昇すると、歯周病が悪化する原因になるそうです。このときにコエンザイムQ10を摂取すると、酸化ストレス抑制効果が発揮され、細胞や組織のATP合成が活性化。歯周の働きが改善するのと、酸化反応と抗酸化反応のバランスが良くなり、炎症を軽減する効果が期待できるのだそうです。※もちろん、他の症状や病気に対する有効性についても試験を行った資料があるのですが、「効果がある」と結論づけるには、根拠が弱い感じがします。
コエンザイムQ10のサプリメントを販売するメーカーが宣伝で言う「肥満解消」や「美肌効果」については、きちんとした無作為化比較試験に基づいたものではないので、個人の感想としてとらえておいたらいいのではないかと思いました。
4.コエンザイムQ10がたくさん入っている食べ物は何ですか?
コエンザイムQ10は、私たちの体の中で合成し、作り出すことが可能な物質です。でも、そのほとんどは食べ物に由来すると言われています。魚や肉類に豊富
コエンザイムQ10が多く含まれる食べ物の第1位は、イワシやサバ、アジなどの青魚類です。100g当たり6~7mgのコエンザイムQ10が含まれています。また、豚肉、牛肉、鶏肉も豊富で、(部位にもよりますが)100gあたりおおむね2~4mgが含まれています。
乳製品も豊富
バターやチーズなどの乳製品、大豆や落花生などのナッツ類、ブロッコリーなどにも多く含まれています。毎日の食事をちょっと工夫して、バランスの良い献立にすれば、無理なく摂取できそうですね。生合成量は加齢とともに減少
体内でのコエンザイムQ10の生合成量は、年齢を重ねるとともに徐々に低下します。特に糖尿病の方や、寝たきりの方は目に見えて生合成量が減っていきます。また、毎日の食事量全体が減っていくので、食事から摂取するコエンザイムQ10の量も少しずつ低下していきます。80歳になると血液中のコエンザイムQ10の量は20歳のときの半分程度にまで減ってしまうそうです。
このような状態になると、コエンザイムQ10を食べ物からだけ採ることは難しいようで、意識的に補う必要性が指摘されるようになりました。
CoQ10サプリメントの誕生
1991年、日本でCoQ10が一般用医薬品となり、薬局や薬店での販売が可能になったころ、世界ではサプリメントとして流通しはじめました。その10年後、日本では食薬区分の変更があり、CoQ10は薬ではなく食品だということになりました。このとき大手メーカーが工業的大量生産に成功し、CoQ10を主成分としたサプリメントが次々に誕生し、販売されるようになったようです。今はCoQ10にビタミンなどをプラスしたマルチサプリメントも豊富に出ているので、自分に合ったCoQ10サプリを探してみるのもいいかもしれません。5.コエンザイムQ10のサプリメントを飲むときに気をつけることは何ですか?
現在市販されているコエンザイムQ10は医薬品ではなく、健康食品です。あくまでも食品ですから、このような人は飲んではいけないとか、副作用がある、ということは報告されていません。 ただ、一般の食品と同じように、たくさん摂りすぎると肝障害などが出ることが分かっています。これは、どんなサプリメントにもいえることですが、持病があったり、妊娠中だったりする方は、かかりつけ医に相談してから利用することをおすすめします。1日の摂取目安量は
コエンザイムQ10を使ったサプリメントは色々なメーカーから様々な種類が市販さています。摂取目安量は、1日当たり100mgが望ましいと言われていますが、詳しくはサプリメントに付属している説明書やパッケージの外箱に記載された注意事項をよく読んでから使用しましょう。安全性は高い
一般的に、健康な方を対象とした場合にはコエンザイムQ10を1日に300mg、4週間の摂取なら安全と評価されています。1日に100~120mg、2年間摂取した場合にも問題はなかったという報告もあります。これらのことから、コエンザイムQ10は、他のサプリメントと比べると比較的、副作用が出にくく、安全性は高いと考えられています。ただし、利用方法や利用する方の体調によっては絶対に安全ともいえないので、心配な場合にはかかりつけ医に相談することが大事かと思います。
体内で生合成もされている
コエンザイムQ10は、食品から採ることもできるけれど、私たちの体内で普通に作られているものだということはご存知でしょうか?ですから、サプリメントとして摂取した後に現れた変化(効能)が、サプリメントに由来するものなのか、体内で生合成されたものに由来しているのか、はっきりと数字やデータで表すことが難しく、サプリメントとしての摂取目安量を明示することが難しいのです。
6.コエンザイムQ10には酸化型と還元型があるようですが、どう違うんですか?
以前は酸化型の方が多かった
医療用の医薬品として使われていた時代には、酸化型コエンザイムQ10しかなかったそうです。酸化型のCoQ10は経口摂取された後、小腸で吸収され体内の血流を巡り、肝臓に入ります。そこで変換されて還元型CoQ10となり、再び血液中に放出され体の中を巡るようになります。しかし、年齢を重ねるとともに、体内で還元型に変換させる力が衰えてしまうので、せっかく摂取しても役に立たないことも多いのではないかと指摘されていました。
還元型のコエンザイムQ10の誕生
2007年に、画期的なできごとが起こりました。国内の素材メーカーが還元型のコエンザイムQ10の製造に成功したのです。最初から還元型をしているので、体内で変換させる必要がなく、摂取した分をそのまま有効に使えると注目を集めました。実は体内では還元型CoQ10のみが利用されるため、健康な方の血液中のCoQ10のほぼ95%が還元型の状態で維持されているのだそうです。
それぞれにメリットが
CoQ10は体内でも生合成されている成分。でも、生合成する能力は20歳をピークにして少しずつ衰えていきます。魚類や肉類、野菜にも含まれているので、食事から摂取することも可能ですが、バランスの取れた食事をすることが難しい方にとっては十分な量が確保されているのか、心配になることも多いかと思います。CoQ10サプリメントは比較的安全性が高く、素材としても安定供給されているため、ドラッグストアやヘルスケアショップで簡単に購入することができます。 どちらかというと、酸化型の方がリーズナブルに購入できるというメリットがあります。一方、体内に吸収されたあと、無駄なく働いてくれることを考えると還元型の方にメリットがあると言えます。市場の動向からすると、還元型CoQ10の方が多く流通しているようで、それは需要があるからと言うことになるかと思います。
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