プラズマローゲンとは(Pls)
プラズマローゲンとは、アルツハイマー型認知症の症状を改善することが世界で初めて証明された、体内にある自然の物質です。
現在のところ以下の4つが、プラズマローゲンの主な働きとして明らかになっています。
- 1. 脳がストレスを受けて酸化(老化)される際、プラズマローゲン自身が身代わりになって酸化されることにより、脳細胞を酸化から守る「抗酸化作用」
- 2. シグナル伝達物質の不飽和脂肪酸(DHA、EPAなど)を細胞に供給するキャリア(運び役)⇒記憶学習力の活性化
- 3. 炎症性物質(タンパク質「アミロイドβ」)の蓄積を抑制
- 4.神経細胞を新たに誕生させる
では、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
抗酸化のしくみ
脳が働くと同時に最初に動く因子がプラズマローゲンです。人はストレスを感じると、その瞬間に脳が疲労して酸化物質(酸素を使った活動の際に体内で発生する活性酸素)を発生します。この酸化という状態が慢性化すると、脳細胞は死滅していき、体内のネットワークが壊れ様々な病気を発症するのです。
この脳細胞がストレスを感じた瞬間に発生する酸化物質を受け取ってくれる「受容体」(身代わり)の役割をしているのがプラズマローゲンです。
抗酸化作用発見のベースとなった脳疲労理論
藤野博士が1997年に発表した、「脳疲労理論」は、メタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病、うつ病などの現代病、その他パーキンソン病や不登校などの行動障害、そして最後のコースの一つともいえるアルツハイマー型認知症は脳の疲労が原因であるとする理論です。
ヒトは人間関係や仕事などからストレスを受けると、大脳の新皮質(司令塔)と旧皮質の関係が壊れてしまいます。そして自律神経(身体コントロールする重要な神経)にも異常が出てくるようになります。これを脳疲労と呼んでいます。
藤野博士は、疲れた脳を癒す方法、BOOCS(脳指向性自己調整システム:ブックス)法を考案しました。
BOOCS法三原則
- ・健康に良いことだけど、嫌いなのであればやらない
- ・健康に悪いことだけど、やめられないほど好きならばやめない
- ・健康にも良くて好きなことを何か一つでも見つけること
BOOCS法の追跡調査結果
このBOOCS法には化学的な裏付けがあり論文として発表されています。
生活習慣病や現代病のリスクが高い人、4137人を、BOOCS法の実践グループと、実践しないグループに分け10年間追跡調査しました。
結果、BOOCS法実践グループは実践しないグループに比べ肥満度や中性脂肪値が大幅に下がり、病気の発症が予防できたことが分かりました。
さらに同グループの15年後の調査結果によると、実践グループは肥満が解消され、全死亡率が半減していたのです。
この脳疲労理論がプラズマローゲン研究のテーマとなり、アルツハイマー型認知症とプラズマローゲンの関係性の証明へと進展しました。
純度の高いプラズマローゲンの抽出方法
プラズマローゲンが含まれるリン脂質とは?
「リン脂質」とは、体内で情報伝達に大きく関わっている物質です。
リン脂質が不足すると…
- ・細胞の働きが悪くなる
- ・コレステロールがどんどんたまっていく
- ・動脈硬化や糖尿病を引き起こす
このリン脂質の一つがプラズマローゲンであり、脳細胞をコントロールしているといわれています。プラズマローゲンは、ヒト、動物、魚介類の体内にある自然の物質です。
ヒトにおいては、リン脂質の約18%がプラズマローゲンであり、脳や心臓や精巣に多く含まれています。
プラズマローゲンが抽出されてこなかった理由
1995年、1999年の研究において、亡くなったアルツハイマー型認知症患者の脳内で、プラズマローゲンが低下していることが発見されています。
また、2007年には、生存中のアルツハイマー型認知症患者の血清に含まれるプラズマローゲンが減少していることが発見されました。
以降、世界ではプラズマローゲンとアルツハイマー型認知症の間には、深い関係があるとわかっていたにもかかわらず研究は進んでいませんでした。
プラズマローゲンの検出には莫大な手間と費用がかかり、さらにはその費用を賄えるだけの量を作り出す技術がなかったためです。
高速液体クロマトグラフィーでの検出
プラズマローゲン研究会の構成組織、レオロジー機能食品研究所の所長である馬渡志郎博士は、2007年、プラズマローゲンの簡単な検出法を発見しました。
馬渡博士は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)での検出に成功したのです。
博士によると「2日かかった作業が1時間でできるようになった」ほど、その手順は簡易化されたようです。
鶏の胸肉からのプラズマローゲン抽出
抽出元は世界中で安価に手に入るものでなくてはなりません。
そこで馬渡博士は鶏(にわとり)の胸肉に含まれるプラズマローゲンを発見し、2年の試行錯誤を経て、92%という高純度のプラズマローゲンの大量抽出に成功しました。
リン脂質の中のプラズマローゲンだけを残す酵素を発見し、さらにその有機溶媒の比率(プラズマローゲン以外の物質を溶かす比率)を見つけ出したことによる成果です。
ホタテからのプラズマローゲン抽出
九州大学大学院生理学の片渕俊彦准教授によると、その後のさらなる研究で、ホタテから抽出できるプラズマローゲンには、鶏肉やその他からは抽出できない、大変有効で有用なな成分が含まれていることが発見されました。
DHAとEPAです。
私たちも今は良く見聞きする成分ですね。サバ缶などがすぐに思い浮かびますが、さて、このDHAとEPA、プラズマローゲンといったいどのような関係があるのでしょうか?
ホタテプラズマローゲンのDHA・EPA
プラズマローゲンは、細胞内のペルオキシソームという細胞小器官の中で、DHAやEPAなどの脂肪酸を材料にして作られています。
ホタテのプラズマローゲンにはこれら不飽和脂肪酸が結合されているため、脳神経細胞の作用の活性化を促進、さらには増強すると考えられるのです。
プラズマローゲンの記憶・学習能力を向上させる効果の証明
マウス実験
『モリスの水迷路』
水をはったプールに水面下1cmに設置されたステージをつけます。
両マウスを8回泳がせ、ステージにたどり着く時間がどれだけ短縮されるか測ります。
1.正常なマウスが検体の場合
プラズマローゲンを与えない対照群と、6週間投与した対照群を設け、比較実験を行いました。記憶が定着されるとする8回目の計測結果は、なんと…プラズマローゲンを与えない対照群は 30.10秒 プラズマローゲンを与えた対照群は、10.43秒という結果が出ました。
2.脳のプラズマローゲンを意図的に減らし、認知症状態にしたマウスが検体の場合
プラズマローゲンを与えていく対照群と、与えない対照群の比は、投与後1週間でその記憶学習力に約3倍の差がでてきました。
与えた対照群はその後も記憶学習力を向上させる一方、与えない対照群はまた元に戻る結果がでたのです。
プラズマローゲンが減少すると、記憶力、学習力がほとんど機能しなくなることが判明しました。
シグナル伝達物質のキャリア
その後の様々な分析の結果、以下の結論に達しています。
脳内には、記憶や学習に関係する物質「BDNF」があります。(脳成長因子、脳由来神経栄養因子とも呼ばれる)その受容体として「トラックB」という物質があります。
プラズマローゲンにはこの「トラックB」を増やす働きがあり、トラックBを増やすことによりBDNFをより多く発現させ、記憶学習力を活性化するというしくみです。
BDNFにはシナプスを増やしたり、神経細胞ネットワークを増強する働きがあります。
脳の細胞の表面には、細胞にとって大切な物質のみが乗っている、「リピッドラフト」と呼ばれる「いかだ」があります。
リピッドラフト上とラフト以外の場所において比較すると、プラズマローゲンは圧倒的にラフト上に多く存在することが分かりました。
BDNFは、このリピッドラフトを介してトラックBと結びつくことにより、初めてその作用が発現できます。
アルツハイマーなどの神経炎症を起こすと、トラックBが減少しBDNFの作用が著しく低下します。
プラズマローゲンはいわゆる両者の道案内的役割といえるでしょう。
プラズマローゲンが運ぶDHAやEPAなどのω3脂肪酸の作用によりBDNFを増加させる、つまり細胞を新生させることも明らかになってきました。
抗炎症作用
さらに研究チームは、プラズマローゲンがアルツハイマーなどの神経炎症の原因となるタンパク質「アミロイドβ」の蓄積を抑制する働きがあることも発見しました。
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβが記憶をつかさどる海馬に蓄積することにより神経細胞やネットワークが破壊されて発症することが分かっています。
九州大学大学院生理学の片渕俊彦准教授によると、
「プラズマローゲンは中枢神経系では、重要な役割を果たしている可能性があります。
アルツハイマー病に限らず、うつ病も脳の神経炎症が起こっている結果であると、わかってきたので、プラズマローゲンは神経炎症系の疾患にも、効果を発揮する可能性があります」
との期待を持っています。
神経細胞の誕生
プラズマローゲンには、壊れた細胞を元に戻して改善するのではなく、新しく細胞を生み出す力があることが判明してきました。
プラズマローゲンの人への投与臨床試験
ホタテプラズマローゲンをアルツハイマー型認知症患者40人を対象に、1日1mgの経口投与を半年間つづけた臨床試験です。
認知機能の評価のMMSE※1において、顕著な改善がみられた患者が5割、変化が見られない(=現状維持)5割、という結果が得られました。
現状維持は悪化をしていないと捉えられるため、ポジティブにとらえてよいと判断します。
※1MMSE(Mini-Mental State Examination)
認知機能障害の測定を目的とした簡便かつ標準化された評価尺度であり、認知症検査として世界的に広く用いられています。見当識、記銘、注意、計算、近時・遠隔記憶、了解、読書、書字、デザインの項目から構成され、30~0点(正常→重度)の範囲で評価します。
また、これら40人の患者のうち、特別な変化を得られた2人の患者を紹介しています。
Aさん:アルツハイマー型認知腸 女性 88歳
摂取開始後1ヶ月で本を読むようになる。片づけができるようになる。
Bさん:レビー小体型認知症 女性 81歳
摂取開始後2週間で、表情に笑顔がでる、幻視がなくなる、診察する博士への気遣いの言葉が出る。
以上のことから、客観的なMMSEの行動面の評価対象の、記憶をつかさどる海馬だけでなく、評価対象外の感情をつかさどる前頭前野にも改善が見られたことは、驚くべき結果でした。
元に戻すことは理論的に可能といえるかもしれません。
藤野博士はプラズマローゲンの可能性を以下のように語っています。
プラズマローゲンの科学的研究は現時点で80点と考えています。80点でも応用することは十分に可能です。あと20点は学問的に興味のあることです。
免疫系や自律神経系、あるいはメタボリック系にどういう経路でつながっていくか?
飛び石的には(その効果を)確信しているが、具体的な“実線”にすること、これが20%。
現在、アルツハイマー型認知症以外にも、臨床研究および基礎研究で多くの研究者と手をつなぎ、具体的“実線”を目指しています
新薬の開発には、日本では10年間、200億円かかると言われています。そんなに時間がかかると、団塊の世代が認知症世代になった今、その対策として間に合いません。ですから、プラズマローゲンは、間もなくサプリメントとして実用化するつもりです。その時は、医療機関での利用を中心にする事で、患者さんとその家族に対する的確な支援ができるのではないかと考えています。
この文章は、九州大学名誉教授の藤野武彦氏を座長とし、福岡大学、レオロジー機能食品研究所、BOOCSクリニックで構成された「プラズマローゲン研究会」が、2006~2015年4月までの間に行った研究結果をもとに書かれています。
参照:https://pls.jp/pls
ホヤ由来プラズマローゲンの発見
参照:ほや(海鞘)プラズマローゲンによる認知症予防への取り組み 宮澤陽夫 東北大学大学院農学研究科機能分子解析学研究室https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/75/2/75_2_309/_pdf 鶏肉にはない不飽和脂肪酸と結合したプラズマローゲンがホタテから検出されたことにより、水産動物に含まれるプラズマローゲンの研究需要が高まりました。 東北大学大学院農学研究科の宮澤陽夫教授は、ヒトの神経組織の発生の一番根本の分岐点近くに、ホヤ(海鞘)があったことを思い出し、他の水産動物とともにホヤのプラズマローゲン含有量の調査を始めました。 参照:兵庫県立大学 http://www.sci.u-hyogo.ac.jp/life/bioinfo/research/hoya.html 結果、水産物の中ではホヤにプラズマローゲンが最も多く含まれていることを発見しました。 プラズマローゲンは、ホヤの可食部にもさることながら、通常廃棄される内臓にも多く含まれており、 ホヤの内臓(肝臓)1tからは; 25%プラズマローゲン=4kg 80%プラズマローゲン=1.3kg 95%プラズマローゲン=1kg もの量が採取できることがわかりました。 さらに調べを進めると、ホヤ由来のプラズマローゲンには大変多くのDHAが結合されていることが明らかになったのです。 前述の通り、アルツハイマー型認知症は、アミロイドβが記憶をつかさどる海馬に蓄積することにより神経細胞やネットワークが破壊されて発症します。 同教授らは、その他さまざまな研究により、アミロイドβ凝集阻害活性の能力を持つプラズマローゲンは、多価不飽和脂肪酸をもつということ、特に海産物、その中でも最もホヤにDHAが高く含有されていることを明らかにしています。 またラットを検体とした動物実験において、ホヤ由来のプラズマローゲンを使用して空間認知力の向上を証明しました。 その結果、プラズマローゲンの神経細胞保護機能が生体でも期待できることが示唆されたのです。ホヤからのプラズマローゲン抽出
参照:三生医薬株式会社 http://www.sunsho.co.jp/LP/hoya/ 現在、ホヤ由来のプラズマローゲン原料を取り扱っているのは、三生医薬株式会社のみとなっています。 抽出されたプラズマローゲンは褐色のオイル状となっており、純粋なプラズマローゲン成分を1%含有しています。 既出の九州大学を中心とするプラズマローゲン研究会の行った臨床においても、プラズマローゲン摂取量は1日当たり1mgとしておりますので、ホヤ由来プラズマローゲンの場合は100mg/日の摂取を目安としています。 また、プラズマローゲンは、酸に弱いため胃酸で分解されてしまわないよう、同社独自開発の腸で溶けるカプセル「腸溶性ソフトカプセル」での摂取が適切との事です。認知症患者数
参照:内閣府 http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html 以下、内閣府が公表する認知症高齢者数の推計からよみとれるように、認知症の有病率は、2018年現在、65歳以上の高齢者の7人に一人から5人に一人に推移しつつあります。 65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には約5人に1人になるとの推計もある(図1-2-11) 現在販売されているホヤ由来のプラズマローゲンサプリメントは、30日分で約4000円前後となっています。 抽出量の少ない鶏由来は30日分で約13000円前後と、価格に3倍近い差があります。 今後ホヤ由来のプラズマローゲンが主流となり、さらに医薬品として認可されることになれば、高齢者の医療費負担額は1~3割であることを考えると、一ヶ月1200円程度以下の自己負担で認知症の薬が処方できるかもしれない、という計算になります。 認知症患者ご本人も、また家族や介護者においても、このホヤ由来プラズマローゲンは一筋の光明となることは明らかでしょう。 より多くの患者様が、一日でも早くこの成分の恩恵を受けることができることができますことを願っております。こちらの記事もよく読まれています。
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